証拠ない・証人いない場合の労災申請

1 証拠がない・証人がいないと精神障害の労災は認定されないのか

 「自分が受けた行為は、証拠がないので証明できないから精神障害の労災は無理でしょ」

多くの方が、当事務所に来られてこう言います。そう思うのが自然かと思います。ダメだと絶望に近い心理状態で、そう思いつつも必死になって相談に来られます。相談というより、見通し、見解を聞きたいとして来られる方も多くいます。

 

 しかし、よく考えてみると、証拠の有無で、労災認定の決定がされているとすれば、そもそも、労働基準監督署は受付段階で「証拠ありますか」と尋ねて、請求人が「ありません」と答えると、「じゃあ、精神障害の労災は無理ですね」と回答して終わってしまいます。

 

また、証拠がないや証人がいないと労災認定されないとすれば、ほとんどの事案で、精神障害の労災認定されることは厳しいものになります。多くの方は、証拠もほとんどなく、証人など無理という状況にあります

 

 いい意味で期待を裏切る話になりますが、精神障害の労災認定の審査はそんな風にはなっていません。証拠の有無で認定しているわけではありません

たとえば、密室で怒鳴るなどのパワハラ行為を受けた場合に、第三者(証人)もいない状況で、かつ、突然怒鳴られた場合には録音記録(証拠)もない状況にあります。

 

このように、何もないからといって、労災は認定しないということになっているわけではないのです。

2 証拠・証人があれば・いれば精神障害の労災認定されるのか

 「証拠や証人があるのであれば、労災認定に近づくのではないか」と思っている方も多いのではないかと思います。それも当然かもしれません。証拠や証人があるだけで、いるだけで、労災認定されると漠然と大いに期待しがちになります。

 

 証拠がある、証人がいるから、相手は否定したところで太刀打ちできないはずというのもわからなくはありません。しかし、うつ状態・適応障害・うつ病などの精神障害が労災認定されることは、精神的負荷の強度が「強」評価を受けることを意味します。

 

負荷の強度を評価するのです。

 それは、証拠があるだけで、あるいは、証人がいるだけで、「強」評価になることではないのです。

 

やや極端な例で恐縮ですが、わかりやすくするためのものとご理解ください。

たとえば、Xさんが、課員10人が参加する会議の席で、部長から1回「ばか!」と言われて、適応障害を発症しました。他の9人全員が部長がXさんに「ばか」と言うのを聞いていて証人となりました。Xさんは、なんとこの会議の冒頭から音声を録音していました。

 

これだけ証拠・証人があるいるのだから、労災の「強」評価になると言えるでしょうか。

難しいのではないかと思います。「ばか」と言われたのは1回だけです。反復継続されてもいません。

 

「でも、Xさんは精神障害を発症しているではないか」との声が聞こえてきそうです。ストレスの程度、それを招いた出来事のグレードや質など、様々な視点が必要になります。証拠や証人だけではないのです。

3 証拠のあるない・証人のいるいないを気にするよりも・・・

これは、精神障害の労災申請に限ったことではありませんが、提出して評価するのは行政機関であって裁判所ではないのです。

 

メール、LINEなどのデジタルツールを印刷してつけるよりも重要なのは、

日記をかくかのように、詳しく、時系列に順番に、推測ではなく事実として、出来事、行為者、状況、背景、対抗状況、発話内容、周囲の発言、上司・同僚への相談内容、体調などを可能ならば、日付を特定して記録化することが重要です。

 

 時系列の記録に、その時系列に書いた事実記録に関係する各資料を別途添付することは任意です。もっとも、ある日のメールで、「仕事出来ねえから、もういなくていい」などと書かれていれば、そのそのことは時系列の記録だけではなく、別途、メール資料でもわかることになりますから、その場合には、メール資料も印刷すべきかと思います。

 

補足しておきますが、メールなどの添付資料が不要と言っているのではありません。添付資料以上に時系列の詳しい出来事の事実記録が重要ですという意味です。資料は任意ですので、ないよりは、添付した方がいいもの、場合も多くあります。不要かどうかわからない、意味あるかどうかわからない・・こういう場合には添付しようと考えた方がいいかもしれません。

 

 共通していることは、証拠や証人に固執するよりも、時系列の出来事を詳しく記録化することが重要であるということです。

 

 

3 報告書のように概略を書いてもわかりません

会社や行政機関などに、報告するのではありません。発病の原因となっている発症前の具体的な出来事が伝わらなければ理解されません。

 

「ヒヤリングの際に、監督署が聞いてくれるんでしょ」・・・これ自体は否定しませんが、当事務所の経験から言って、労基署のヒアリングを待つのではなく、自ら紙で積極的に具体的に伝えて理解してもらえるようにと整えることが大切だと考えます。

 

冒頭、報告しているわけではないと書きましたが、労働基準監督署や専門家に報告するレベルは必要ありません。単に、各種相談の時に短い時間で出来事の概要がわかりやすいというにすぎません。

 

必要なのは、

発症前に、いつ、誰から、どのような場面で、誰から、どういう行為を受けたのか、自分はどういう態度・対応をしたのか、周囲はどう言っていたのか、そのことを会社に言ったのか・言わなかったのか、会社に言った場合には、いつ、だれに、どう言ったのか、会社はだれがどう対応したのかなどです。

 

記憶が残っている限り、これらを、可能な限り、会話がある場面は会話がわかるように伝えることが重要です。特に、怒鳴られた場合や強く言われた場合などは、嫌味を言われた、怒鳴られただけではわかりません。

 

具体的に書いてある資料を示すことで、労災の評価を受けることにチャレンジをすることになります。厚生労働省は、各種資料にて、「具体的な出来事があり」というように言っています。これを意識して記録を紙にすることが重要です。

 

LINE、メールなどの記録は、発病前の具体的な出来事を時系列に書いた資料の添付資料となります。まずは、その日、その日に具体的に何があったかを紙の活字で伝えることです。

今、これを読んでいただいて理解できた方は、今から作成した資料で大丈夫です。行政機関は、証拠調べをして労災認定するわけではありません。

 

業務災害か否かを決めるのは、、つまり、受けた心理的負荷の強度の評価の決め手は、発病前に受けた災害のグレード、内容、質になるかと思います。

 

先の例でも取り上げましたが、1回の会議で1回のみ「バカ」と言われて精神障害を発症しました。そのことをどんなにいくつもの証拠や証人を揃え、労災の書面で強く主張しても、業務災害と認められる、つまり、心理的負荷が強評価とされることは・・・・・・?

 

確かに、1回の出来事だけでもパワハラに該当するとされることはたくさんあります。しかし、それは、パワハラに当たるということです。精神障害の労災認定の評価は、ある事実がパワハラに該当することを持って、強評価になって労災認定になるわけではありません。

補足しておきますと、会社が、加害行為者が、認めているからといって、精神障害の心理的負荷の強度が強評価になるわけでもありません。

 

そもそも、精神障害の心理的負荷表は、パワハラに当たるかどうかを評価するための表ではありません。そのことは、厚生労働省も指摘しているところです。

 

3 本WEBサイトでなぜ詳しく伝えているのか

当事務所は、本WEBサイト上で、精神障害の労災に関係することについて、かなり詳細にご案内させていただいております。

 

それは、多くの方が、精神障害の労災認定の基準、労災認定の仕方、資料こと、具体的な出来事の示し方などなどについて、少し、誤解しているかもしれないと感じることが多くあるからです。

 

また、ご自身で資料を作成する場合、あるいは、他人作成の出来事に関係する資料を添付する場合などで、その資料に誤字脱字、役職名が正式名称でない、日付が違うなどがあるかもしれません。発病前の出来事がまるで違うということがないのであれば、それらは、あまり厳密に気にする必要はないかと思います

 

そもそも、他人が作った資料は、請求人は修正できません。役職名が違っていても、資料読みやヒアリングの過程で、正しく把握されていると思われますし、そうすることは十分に可能です。もちろん、最初から、きちんと整備されているほうがより良いのは確かです。

 

いずれにしても、誤字脱字や表記の誤りなどを気にするよりも、発病前の出来事を正しく伝えることのほうを気にするすることが大切です。

 

参考にしていただければ幸いです。

WEBサイトでは、お伝えしたくても、非常に多くの限界があります。デジタルの世界は限界が多くあります。少しのことしかお伝え出来ません。

 

是非、あるだけでの資料を持って、当事務所に1回ご相談にお越しください。いろいろとお話させていただくことが可能です。その際に、資料で重要なのは、出来事を具体的に時系列に書いたものになります。

 

まずは、1度、相談を受けてみてください。全体を理解していただけると思います。

 

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