会話をかってに録音した場合の録音資料は有効か1

パワハラなどの被害者がかってに上司との会話などを秘密に録音した場合の証拠はどうなるかというお話しです。

 

巷では、「秘密に録音しているということは、承諾をとってないのにかってに録音したのだから、その録音資料を法定や労働審判、あっせんなどの公的な紛争解決の場所で使用すれば、会社や上司は労働者に違法だと言ってもいい、労働者はそう言われてしまうのではないかという労使双方にとってもやもやが生じます。

 

まず、問題を整理して考えましょう。大きくは、秘密にかってに録音する行為の問題録音資料を使用する問題が考えられます。

 

民事訴訟法でも、違法収集証拠の証拠能力を否定すべきか否かは問題になっています。

従前は、証拠収集の方法に刑法や民法(実体法)上の違法があっても、証拠能力が否定されず、証拠の評価は、自由心証(裁判のおける事実認定を、現れた資料・状況を基に、裁判官に形成される心証にゆだねることで、法的な制限をしない)の問題とされていました。

 

でも、そうすると、証拠の収集において違法行為を助長するうえ、公平を損なうことが問題視されるようになったのです。一方、証拠の収集方法に刑法や民法上の違法があると、すべて証拠能力を否定するのも適切ではないと、これも問題視されたのです。

 

そこで、証拠能力を肯定する場合と否定する場合を振り分ける基準を求めるという考え方になったのです。

 

その考え方に基づいて基準を示したのが、東京高裁の裁判(東京判昭57・7・15判時867号60頁〔百選3版71事件〕)です。東京高裁の裁判にしたがえば、著しく反社会的な手段を用いて憲法の保障する権利、とりわけ人格権の侵害を伴う方法によって収集された証拠方法については、証拠能力を否定し、違法性の程度がこれに至らない場合には証拠能力を認めてよいと理解できます〔強調・下線は亀岡が付す〕(中野貞一郎=松浦馨=鈴木正裕『新民事訴訟法講義〔第2版補訂版〕』(2007有斐閣)347頁)。

 

憲法上の権利、特に人格権の侵害にあたる方法とは、たとえば、会話する者の精神的・肉体的な自由を拘束した状態でなされた会話の録音テープ、家屋に浸入して盗聴マイクを設置して録音したテープなどを言っています。これらは、相手の権利を侵害した行為にあたるため、その方法で録音しても証拠能力はないと考えられます。

 

私が下線を引いた違法性の程度がこれに至らない場合とは、たとえば、単に話す者の同意を得ないで無断で録音したテープなどを言います。このような方法で録音した会話内容は、証拠能力を有すると認められることになると考えられます。

 

参考として、昭和52年7月15日の東京高裁の裁判例で裁判官が述べている一般論の部分を『 』で引用しておきます。

 

『ところで民事訴訟法は、いわゆる証拠能力に関しては何ら規定するところがなく、当事者が挙証の用に供する証拠は、一般的に証拠価値はともかく、その証拠能力はこれを肯定すべきものと解すべきことはいうまでもないところであるが、その証拠が、著しく反社会的な手段を用いて人の精神的肉体的自由を拘束する等の人格権侵害を伴う方法によつて採集されたものであるときは、それ自体違法の評価を受け、その証拠能力を否定されてもやむを得ないものというべきである。そして話者の同意なくしてなされた録音テープは、通常話者の一般的人格権の侵害となり得ることは明らかであるから、その証拠能力の適否の判定に当つては、その録音の手段方法が著しく反社会的と認められるか否かを基準とすべきものと解するのが相当であり、これを本件についてみるに、右録音は、酒席における石上らの発言供述を、単に同人ら不知の間に録取したものであるにとどまり、いまだ同人らの人格権を著しく反社会的な手段方法で侵害したものということはできないから、右録音テープは、証拠能力を有するものと認めるべきである。(下線は亀岡が付す)』

 

つまり、昭和52年7月15日の東京高裁は、一般論で、録音の手段方法が著しく反社会的であると認められない限り、証拠能力を有すると言っています。これは一般論ですので、各事案における録音の手法が著しく反社会的なものかどうかを検討することになります。

 

次に、証拠を吟味する証拠調べにおいては、文書によって証拠資料とするものを書証と言っていますが、図面、写真、録音テープ、ビデオテープ、その他の情報を表すために作成された物体は、文書に準ずる準文書とされており、書証の規定が準用されます(民事訴訟法231条)。ちなみに、岡伸浩『民事訴訟法の基礎〔第2版〕』(2008法学書院)319頁でも記載されています。

 

補足ですが、民事訴訟法上の原則は、証拠能力に制限はない、つまり、限定などされていません(藤田広美『講義民事訴訟法〔第2版〕』(2011東京大学出版会)58頁、ちなみに、旧版では、239頁参照)。

 

整理しておきますと、無断で録音した録音資料は、著しく反社会的行為に該当する手段・方法によるものでないかぎり、証拠能力が認められると考えられますが、その録音データをネット上など、承諾なく他人の目につくような状態に置いたなどすると、録音資料の使用上の問題になると考えられますということになるかと思います。

 

ただし、録音される会社や上司は、従業員に録音されることを決して歓迎しないでしょう。危険人物扱いされる可能性もあります。録音資料に有効性があるからといって、なんでも録音するのは避けた方がいいでしょう。暴言などハラスメントの証拠を残す目的などに限定して実施したほうがいいと思われます。

 

以上、参考になりましたら幸いです。

 

★会話をかってに録音した場合の録音資料は有効か2

 

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