上司との会話をかってに録音した録音資料は有効か2

その1に続いて黙って行われた録音の証拠能力についてのお話です。

少しやっかいな点に触れておきます。民事訴訟で言いますと、争点整理の手続きの過程で、書証が利用されるわけですが、そのような民事訴訟法の世界が関係しない調整型の紛争解決においても、争っている点に関する証明資料あるいは疎明資料を利用する点では同じです。

※証明資料:事実の存在に確信を抱かせるような証明になる資料

 疎明資料:事実の存在が一応確からしいとう、確信よりも低い心証を抱かせるような資料

 

そこで、やっかいなのは、真に争いのある部分について文書(録音資料などを含む)が存在する場合は、その文書が作成者の意思に基づいて作成されたのかどうかが検討の対象になる場合があります。

民事訴訟では当たり前ですが、あっせんや示談交渉でも、会社側は、「録音なんかあったって、作為

なんかいくらでもできるだろ」などと言う場合もあり、そのような時に関係してきます。労働者もそのように言われた場合への話の出しどころはポイントになります。

 

つまり、会社側からすれば、民事訴訟のプロセスに従って、録音資料の録音自体に信憑性がないことを指摘することで、証拠価値がないと主張しようという意図です。証拠能力とは別の問題で、証拠能力を問題にするまでもなく、真に自らの意思で録音した神聖なものでないものは証拠としての価値がないと言いたいわけです。労働者側は、録音が真実で、自らの意思で録音したものであることを主張することになります。

 

録音の場合は、日付を客観的に記録することはなかなか難しいですが、調整型の紛争解決では、1回の審議が2〜3時間で終了しますから、そのことに時間をかけるわけではありません。

 

あまり、考えずに、提出できる証明資料や疎明資料は、とにかく提出し、主張をすることに尽きます。

 

社労士亀岡が熟読した労働判例の中に、以下のものがありましたのでご紹介しておきます。やや古い裁判例ですが、とても参考になります。さすがに当時はボイスレコーダーではありませんが、媒体がちがっても趣旨は同じように考えていいと思います。

 

●エールフランス事件・千葉地判平6・1・26労判647号11頁。

●   同    ・東京高裁判平8・3・27労判706号69頁。

 

会社の希望退職者募集を拒否したところ、暴力を含めた退職強要を受けはじめたことから、原告Xが、それらを証拠化し、かつ、牽制するために、上着やシャツのポケットにテープレコーダーを入れて録音した。Xが同意を得ずに無断で録音した証拠方法が問題となった。

 

以下、判決文の要旨です。

【証拠能力】

民事訴訟法は、いわゆる証拠能力に関しては何ら規定するところがなく、当事者が挙証の用に供する証拠方法は一般的にはすべて証拠能力を肯定すべきである。・・・・許されない手段すなわち著しく反社会的な方法を用いて収集されたものであるときには、それ自体違法の評価を受け、その証拠能力を否定されることになると解するのが相当である。・・・本件録音テープは相手方の同意を得ないで録音されたものである。しかしながら、ここでいう相手方は通常の対話の相手ではない暴力行為者であり、しかもそれが職場という密室で行われたために、これに対抗する手段として本件各録音テープの録音がなされたというのである。そのような状況下における暴力行為等を確たる証拠として残す手段としては、録音という方法が有効かつ簡単な方法であるから、録音テープの証拠能力を否定すれば相手方の違法行為を究明できないことになって、かえって正義に反する結果となる。それ故、暴力行為者たる相手方の同意を得ずにその状況を録音する行為は著しく反社会的な行為とはいえず、本件各録音テープの証拠能力を肯定すべきである。

 

【信用性】

被告は、原告Xが被告らに言いがかりをつけて挑発し、多少過激な口調を使用することを予測したうえで、実際に、いいがかりをつけて、そのような口調や言葉を録音したものであると反論した。しかし、裁判所はこれを認めず、「被告らを挑発した状況下で録音されたものではないことを前提に証明力を評価すべきものである」とした。

 

高裁でも同様に、証拠能力と信用性が認められています。その1で挙げました、昭和52年の東京高裁の判決の一般論にしたがった判断基準を採用しています。通常の民事訴訟における証拠能力と証拠価値(作為なく、真に作成者の意思によって録音されたものかどうか)について判断をしていますが、一般論のあてはめでは、相手が暴力行為者であることをかなり考慮したものになっています。

 

暴力のない、単なるいじめ・嫌がらせやパワハラの場合に、録音資料がいかなる評価を受けるかは、事案内容により温度差は出てきますが、基本的な判断基準は、昭和52年の東京高裁判決の一般論だろうと思われます。

 

会社との直接交渉、あっせんなどの紛争解決においても録音資料については、同様に取り扱っていいのではないかと考えられます。

 

労務実務的には、黙って録音したことの証拠の評価が以上のようであるからいいとはいえ、従業員が、会議、上司の言葉などを録音している行為を歓迎する会社はないでしょう。会社からすれば、危険人物扱いになり得るものです。

 

そもそも、従業員にとっても、スマートフォンやボイスレコーダーなどに録音するということは、録音媒体を家に持ち帰り、喫茶店や居酒屋に行く鞄に入れるなどするわけですから、ふと忘れたり失くしたりということがまったくないとは言えないわけです。その時点で他人が拾得すれば「漏洩」との評価に結びつく話にもなりません。重大な事件になるわけです。

 

最近はきちんと話を聞いて、きちんとメモをとることをしなくなっています。手で書くことをめんどうがるからです。しかし、基本はメモです。労働者も、実務上は、録音行為は歓迎されない行為であり、注意・指導の対象になる職場もあることを肝に銘じておく必要があるかと思います。

 

録音資料として有効だとしても、録音された方からクレームがついたりする可能性があります。言葉による人格権侵害行為などを残すため行う録音行為に留めたほうがいいかと思います。

 

★上司との会話をかってに録音した録音資料は有効か1

 

ご相談は、相談予約フォームよりご希望の日時を記入の上お申し込みください。

 

お急ぎの方は電話でのご予約を

048-748-3801

9時ー18時(土日祝日除く)

お問合せ・ご相談はこちら

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
048-748-3801

営業時間:平日9時-18時
定休日:土日祝日(事前予約で相談対応します)

埼玉労働問題相談所・春日部ではパワハラ・退職・解雇・退職勧奨問題についてタイムリーで丁寧な労働相談を行っております。
当事務所は退職・解雇・やむを得ない退職(追い込み退職)・パワハラを専門に研究し続けており、サービス残業(未払い残業代)相談・労災相談などの労働相談はもちろんですが、退職勧奨・退職・解雇問題・パワハラなどに特に強い事務所(社労士)です。
丁寧な事実確認、主張内容の検討を行います裁判所に頼らない、対応策、解決までの交通整理行います。パワハラ退職退職勧奨退職追込み解雇に納得がいかず、そのまま泣き寝入りしたくない方で裁判所の手続きに頼りたくない方はどうぞご相談ください(運営:首都圏中央社労士事務所)。
ニトリではありませんが、「お値段以上」を貫いております。

労働者の健やかな日々を願って!
労働相談は予約制!
退職・解雇・退職勧奨(退職促し)・
追い込み退職、ハラスメント、退職理由

対応エリア
埼玉県/春日部市、越谷市、草加市、さいたま市(浦和区、大宮区、岩槻区など)、川口市、蕨市、幸手市、久喜市、吉川市、三郷市、八潮市、上尾市、蓮田市、加須市、行田市、伊奈町など埼玉県全域、東京都/千葉県/栃木県/茨城県/神奈川県(横浜市など)の首都圏・関東(群馬県を除く)。電話相談は全国対応

お気軽に
お問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

048-748-3801

<受付時間>
平日9時-18時
事前予約で時間外・土日祝日も相談対応(面談)

サイトで費用のページをご確認ください

  • 電話相談
    (主に遠方の方)

  • サービス案内

  • 退職・解雇の問題

  • パワハラ・いじめ・嫌がらせ

  • 裁判所に頼らない   
    紛争解決の方法

  • 紛争解決機関の特徴

  • お金がもらえる話

  • お問合せ・相談予約

首都圏中央社労士事務所

住所

〒344-0031
埼玉県春日部市一ノ割1-7-44

営業時間

平日9時-18時

定休日

土日祝日
(事前予約で相談対応します)

主な対応エリア

埼玉県(春日部市、越谷市、草加市、さいたま市など)、東京都、千葉県、栃木県、茨城県など首都圏(群馬県を除く)。電話相談は全国対応